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2-⑥ 失うことによって得る法則

<失うことによって得る法則>(P53〜)

-無価値なものを喜んで捨てなさい

人間の心が渾身の力をこめて抵抗していたひとつの心理法則をとりあげてみよう。抵抗はしたものの、受けてみて理解すれば、この法則は測りがたい霊的な生をもたらしてくれる。

それは進んで失うことによって得るという法則である。新たに優れたものを獲得するためには、まず古い劣ったものを失わなくてはならない。世俗の世界でも、古い椅子と新しい椅子を同時に同じ場所においておくことはできない。精神の世界でも同じである。心は、真のアイディアと贋のアイディアの二つを同時に容れるスペースをもたない。どちらか一つしかこの場所を占拠できない。

真に価値あるものを得るためには、浅薄(せんぱく)で無価値なものをよろこんで棄てなければならない。ひとつのストーリーがポイントを例示してくれよう。それはサアディー(Saadi ペルシャの詩人。一一八四?〜一二九ー?)がペルシャの古典『グリスターン』(薔薇園)から採って語り直したものである。

二人の友達が、それは二人ともアラブの王族の息子だったが、各々の目的を追求しにエジプトにいっていた。一人は富と政治権力を得るために全力をそそぎ、成功して、遂にエジプトの王族となった。もう一人は、科学と神秘思想の成果を探求したが、同じく哲人として成功しつつあった。王族が友の身分の低さを嘲笑(ちょうしょう)すると、哲人はこう答えた、「わたしは世俗的な富を無視して真の叡智を求めたことをありがたいことと思っています。それはひとつには、わたしには人類を痛めつける権力をもたないからです」

あなたは、新しいものの性質をまず知りたいと望まずに、よろこんで古くて浅薄で無用のものを棄てるだろうか?スーパーマインドをめざして進む一歩ごとに、これがあなたにふりかかってくるチャレンジである。次の問答を読んで、どう進むべきかの参考にしてほしいー

Qあなたは秘教的アイディアはどれも単純だとおっしゃいましたが、でもやはり難しく見えます。なぜですか?

Aアイディアというものは、簡単でもなお明療でないことがあります。アイディア自体は単純なのであって、誤解は心のなかにあるのです。心に曇りがなくなれば、アイディアも明瞭になってきます。

Q どうしたら”自己覚醒”した人になれるのか、わたしにはまだ分っていないのですが、わたしに実行できそうな実際的なテクニックがありましょうか?

A一日のうちにあなた自身の内部で、観察できた強い印象を紙きれに書きこむのです。強烈な、しかも感情についての印象だけを集めるのです。ごく短く書きます。たとえば<天候に悩まされた>とか<よいニュースに奮い立たされた>とか。就寝前に、あなたの観察したその日の印象群を検討してみます。これで意識された内容がふかく心に刻まれ、これであなたは変化していきます。

Qわたしは他の人々を助けたいと思うのですが。

A どうか世界を救おうなどとして飛び回わらないで下さい。あなたにできる仕事は全てあなた自身を救うためなのですから。