1-③ あなたは同時に二つの世界にいる
<あなたは同時に二つの世界にいる>(P24〜✔︎)
内なる王国が外界を支配する
あなたは実際は、いつも同時に二つの異った世界に住んでいるのである!これを本書では内なる世界と外的な世界と称ぶことにしたい。これを理解すると混乱が一掃され、あなたの精神的かつ宇宙的な力を増強するのにすばらしい効果がある。
あなたはその肉体、他の人々、家庭、経済生活、政府、旅行、自動車等々から成る外的な世界で生きている。そして同時にまた、あなたの思考、感情、欲望、洞察力、好奇心、その他の心理的なものの働いている内的な世界に生きている。だが、あなたがものを考える場合、あなたの内的な世界を優先させなければならない。このことが、本書で説くところをもふくめて、すべての真の宗教、哲学の最も重要な教えである。
なぜ内なる霊的な王国が優先するのかといえば、内的なものが外界をコントロールし、決定するというすこぶる簡単な道理からである。ところが人類という集団は、この真理を口では唱えながら実際には理解していない、それが多くの人々の神経症の原因になっている。
このことがあなたの未来とどう結びつくのかを考えてみよう。この先どういう家庭をもとうかといった外部的な事柄は、あらかじめ計画を立てることは正しくもあり必要なことでもある。しかし明日どうすれば、またどこにいたら、幸せだろうかとムキになって計画するのは正しいことではない。第ー、未来はあなたの要求にたやすく従うものではないからだ。だが一番大切な点は、明日われわれを幸福にしてくれるものを考えるということは、今日われわれに許されている生の享楽(きょうらく)を明日に延ばすことだからである。
あなたが精神の世界に立脚して生きれば生きるほど、あなたの実人生はより気軽なものとなってくる。あなたは、経済上の悩み、社会の要求、あなた自身の混乱、そういったものに振りまわされず、自分の為すべきことは何かを的確に心得るようになる。そうしたひとつとして、あなたは外的な事柄に余計な神経を使わなくなる。
日常、いろいろな決定や采配にあたまを使う煩わしさひとつをとっても、"二つの世界"ということの理解が、こうした拷問を廃棄してくれる。
身体ということでも、日常の決定そのものは必要ではあるが、要は、それに煩わされないことだ。
黒っぽい服ではなくブルースーツを選ぶ、コーヒーではなく紅茶にする、そんなことはそのときそのときの欲求に従ってすればいい、こういった態度にあなたはなれる。
スーパーマインドという高いレベルで生きるならば、あらゆる意思決定は不要なこととなる。偽りの自己 ー それは相互矛盾するいくつかの欲求のかたまりであるが ー を棄却すれば、およそ満足か不満足かの問題にかかわるあらゆる決定はしなくともすむようになる。たがいに拮抗(きっこう)し引っぱり合う力というものがないのだから、選ぶという心労はなくなる。われわれはスーパーマインドの原理のまにまに、勝利を高らかに謳い(うたい)たのしむつつ生きるということになる。
正しい流れに乗っていれば、ボートを右へよせるか左へよせるかという煩いはない。生がわれわれのために決めてくれる。それをとやかく心配することはない。生そのものに決めさせ、こちらはただボート乗りを愉しめばよい。生の流れに従い、そのプロセスに干渉しない ー これは老荘思想が教えてくれる貴重この上もないアイディアである。
同時に二つの世界で生きている、このことを理解すること。そして必ず内的な世界を優先させること。こうすれば、両方の世界でのんびりと生きていける。
この辺まで読んでくると、あなたはこう訊くかもしれない、「なるほど、これはなかなか魅力的な探究ではある、だがおれはその為に何をしなければならないのか。何をするのか、それをどんなふうにするのか、そこをはっきりと知りたい」と。よろしい、あなたの読むパラグラフはどれも、耳新しいのでずいぶん変った考え方だと聞こえるではあろうが、あなたに何を為すべきかを告げているのである。物語で読んだ大変な秘宝の在り処を示す地図がある、この地図を入れた封筒をあなたはいま開封しようとしている、そう思ってもらいたい。ただ、もうしばらく辛抱して読みつづけてほしい。
秘教的な啓示を獲得するのに、あなたはインドやエジプトを訪ねなくともよい。それはあなたの心のなかにちゃんと在るのだ。まことに奇蹟的な在り方ではある。あなたは探りさえすればいい。探りたいだけ深く探ればいい。それはあなたの望み次第なのだ。
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