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14. 信頼 Trust

深い信頼のなかにあれば、状況はどうあろうとも、信頼のその質があなたの生を変容してくれます。

 ミラレパがチベットの彼のマスターのところに行ったとき、彼はあまりにも控え目で、あまりにも純粋で、あまりにも真正だったために、ほかの弟子たちが嫉妬し始めた。彼が後継者になるのは確実だった。
そこで彼らは彼を殺そうとした。

 ミラレパはまるで少しも人を疑わなかった。ある日、ほかの弟子たちが彼に言った。「もしお前がほん
とうにマスターを信じていたら、崖から飛び降りることができるだろう? もしそこに信頼があったら、それはなんでもないことだ! けがをすることはないさ」
 そこでミラレパは一瞬の間もためらわずに跳んだ。弟子たちは駆け降りた……それはおよそ三千フィートの深さはある谷だった。彼らは散乱した骨を見つけるために降りて行った。だが彼はそこに蓮華座で、途方もなく幸せに坐っていた。

 彼は目を開けて言った。「あなた方は正しい———信頼は命を救う」
 彼らはこれはなにか偶然の一致にちがいないと思った。そこである日、家が火事で燃えているときに、彼に言った。「もしお前がマスターを愛し、信頼していたら、火のなかにだって入れるさ」 彼はなかで取り残されていた女性と子どもを救うために飛び込んだ。火はとてつもなくすさまじかったので、彼らは彼が死ぬものと期待していた。だが彼はまったく焼けていなかった。しかも彼は、その信頼ゆえに、さらに輝きを増した。

 ある日、彼らは旅をしていて、川を渡ることになった。そこで彼らはミラレパに言った。「お前は舟に乗る必要はない。お前には非常に大きな信頼があるんだ———お前は水の上を歩けるさ」 そして彼は歩いた。

 マスターが彼を見たのはそれが初めてだった。彼は言った。「お前はなにをやっている? ありえないことだ」
 ところがミラレパは言った。「マスター、私はあなたの力でこれをやっているのです」
 さあ、マスターは考えた。「もし私の名前と力で、無学な、愚かな男にこれをやらせることができたのなら……自分でためしてみたことは一度もなかった」 そこで彼はためしてみた。彼は溺れた。それ以来彼の消息はまったく聞かれなかった。

 光明を得ていないマスターですら、もしあなたが深い信頼のなかにいたら、あなたの生に革命をもたらすことができる。そしてその逆もまた真実だ。光明を得たマスターですら、どんな役にも立たないかもしれない。それは完全にあなた次第だ。
THE BELOVED, Vol.1, pp126-127