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10. 価値 Worth

自分の価値を証明しようとして、自分自身を商品におとしめてはいけません。
生の最も偉大な体験は、あなたがすることを通してやって来るのではなく、愛を通して、瞑想を通してやって来ることを覚えて
おきましょう。

 老子が弟子たちとともに旅をしていた。彼らは、何百人もの樵(きこり)たちが木を切っている森にやってきた。
森全体は、何千もの枝を張っている一本の大きな木を残して、ほとんど切り倒されていた。その木は一万人の人びとが木陰に坐れるほど大きかった。

 老子は自分の弟子たちに、なぜその木は切られていないのかたずねてくるようにと言った。彼らは樵のところに行ってたずねた。すると彼らは言った。「この木はまるで役に立たない。枝という枝に節が多すぎて、これからはなにも作れない——まっすぐな枝がひとつもないのだ。燃料にすることもできない。煙が目の毒だからね。この木はまったくの役立たずだ。だから切らなかった」

 弟子たちは帰ってきて老子に伝えた。彼は笑って言った。「この木のようになるがいい。もしお前たちが役に立つようなら、切られてしまい、誰かの家の家具になってしまうだろう。もしお前たちが美しかったら、市場で売られてしまうだろう、商品になってしまうだろう。この木のようになるがいい。まったくの役立たずに……。そうなったらお前たちは大きく、広大に成長して、何千もの人びとがお前たちの下に陰を見いだすだろう」

 老子はあなたとはまったくちがった論理をもっている。彼は最後の者でいるがいいと言う。世界のなかをまるで自分がいないかのように動くことだ。競ってはいけない、自分の価値を証明しようとしてはいけない——その必要はない。役立たずのままでいて楽しむがいい。
TAO : THE THREE TREASURES, Vol.1, pp.69-71

 その人がどのように有益かということで私たちは人びとを計る。だが私は、私たちはなにも役に立つことをしないと言っているのではない——役に立つことをするがいい。だが覚えておくことだ。生とエクスタシーの偉大な体験は役に立たないことをすることから生じる。
それは詩を通して、絵を描くことを通して、愛を通して、瞑想を通してやってくる。商品におとしめることのできないなにかをする能力があって初めて、最も偉大な喜びがあなたを押し流す。報酬は内側にある。もともと備わっている。それは行ないから湧き起こる……。

 だから自分は役立たずだと感じても心配することはない。私はあなたの役立たずも使う。私はあなたを大きな葉むれのある巨大な木にするつもりだ。それに、役に立つ活動にたずさわっている人びと……彼らにはときとして木陰で休む必要がある。
THE WISDOM OF THE SANDS, Vol.2, pp.308-309, 311-312