11-⑤ 恐怖にみちた努力をやめるには
<恐怖からの自由にみちた努力を達成すやめるには>(P269〜P272〜)
-恐れている間にも前へ進め
舞台の催眠術師が一人の被術者に、自分が狼に追いまわされていると思いとませたとしよう。技術者は恐怖にかられて逃げ回わる。この人を助けるのに、あなたはもっと速く走れとか、棍棒で狼に打ってかかれとアドバイスはすまい。あなたは彼にただ、眼を覚ませと言うだけだろう。
われわれも正に目を覚まさなければならない。物事に対して、それをあるがままに見るように、目を覚まさなくてはならない。
怖れは完全に追放されなくてはならない。純化された魂はなにものも恐れない。(プロティノス)
怖れないように努めるな。それは不可能なのだ。むしろ、怖れている間にも、進め。恐れを消す秘訣はそれだけだ。
スーパーマインドはわれわれにいささかの自己関心をも持つなと教える。あなたに何が起ころうと、起こったのは誰か他の人に対してであったかのように、あなたは行動しなさい。
ある人が私に訊ねた、「あなたは、現在の瞬間は恐怖から自由である、今の瞬間には平和がある、とおっしゃいました。もしそうならば、いま現在、わたしが心安らかでないのはどうしてでしょうか?」
私は答えた。「いま現在の自由を悟らないからです。あなたはまったく無意識的に、過去の痛みの記憶で考えている、そして現在を記憶のベールで蘇っている。いま現在以外には何ものも存在しないのだと悟るように努めなさい。あなたの恐怖と、過去の恐ろしい出来事の記憶との結合を見詰めることから始めなさい」
たぶん人は混乱を恐れるのだ。人が混乱にどう反応するかを見守れ。彼がいかに熱心に彼の圧力を軽くしようと努めるかを注目せよ。混乱が他人との意見不一致をもたらすとき、どんなに早く彼がロを開き、言い争うかを見よ。これでは彼は解決は見つけられない。これでは、防衛的な意見ばか頼りの条件づけられた心を動員させるだけである。それはまるで平和団体を設立するために攻撃的な兵士の部隊を呼集するようなものだ。兵士らは平和という主題はまったく知らないのだ。
新しい自己覚醒が求められる。新しい自己覚醒は、人が混乱と戦わないで、静かにしているときに、現われる。生の昏迷に対する解答は、固定した心では見つかり得ない。解答は、条件づけられた心がなにも言わないでいるとき、なんの骨折りもしないでいるとき、やってくる。一切を失え
私はここであなたに、いま何百万人という多勢の人々を苦しめているひとつの恐怖についてお話しよう。
この恐怖は、でてくるときは常に無意識なそれであるから、人々はこの恐怖が自分達にどういう悪さをしているか分るはずがないのだ。あなたはそこのアイディアを研究しにじっと静かに坐ってほしい。そして、これと同じことがあなたにも当てはまるかどうかを調べてほしい。
さてこの恐怖は何も起こらないことへの恐怖を調べられるか?この恐怖から逃げようとしないでいられるか?逃げる逃げないといったって、あなたの脚で走ってあなたの身体から逃げられはしまい、それと同じだ。逃げられはいないのだ。だが理解はできる。理解は逃けるとととはまったく別のことだ。
そこを観察しなさい。いまわゆるあなたの安全、安定を風にくれて投げすててしまうのだ。あなたにそれができるかしら?
あなたが頼りにしている一切を失え!外部的な出来事をもふくめて一切を失う羽目へあなた自身を追いこむことだ。あらゆる気ぜわしい神経質な企てと関心とを占め投げすてよ。何もするな、何も持つな。無であれ。あなた自身を安全にしようという企てはやめよ。自分が安全か安全でないかの心配すらもあなたは薬てられるかしら?もし薬てられたら、あなたは近い、一歩近づいたといえる。
静かでいる心には全宇宙が屈服する。(荘子)
新たな決意をもって宣言せよ、「わたしはこれへの解答は知らない。わたしは分っているだけだ、わたしが何も知らないということを、そしてよろこんでそのままでいくのだということを。わたしはわたしの習慣的な考え方で解答は求めないのだ。わたしは解答なしで行くのだ。わたしはストップする。
黙ってストップする。それで全部だ、それで全部だ、それだけだ」あなたが解答を求めないとき、解答はそこにあなたに何も起こらず、何も起こりそうもないとき、あなたの心にひとつの漠然たる不安が湧いてくるのをあなたは気づいただろうか?
この空虚を感じると。スーパーマインドによって、人は何かをする。空虚の苦しみから逃れるために、何でもする。しかしそれは気散じにすぎない、紛らわしにすぎない。遅かれ早かれ、騒々しいパーティーは終り、前と同じ恐怖が玄関の入口からまた入ってくある。
逃避を求めるのでは解答にはならない。逃げないことが解答なのだ。